ハロウィン・パンクラチオン!!!

アイドルωキャッツを遊びすぎた弊害。ゴッドナンバーズがハロウィンにちなんだ仮想で票の取り合いをするパンクラチオンの話です(???) 健全オールキャラギャグ。
※ただ、書いている人は腐女子でヴァカアポ民なので、そういう風に読めてしまうかもしれません、すみません。


ハロウィン。それはここオリュンポリスでも盛大に行われるフェスティバルでありパーティーでありパンクラチオンである。

つまり。

ここに、真のヒーロー改めアイドルが誰であるかを決定するコンテストが開かれていた!!

「とは言え、今年はアレス零もハデスIVもいる。さすがに私がまたトップを取ることもないだろう」
「なりません!! アポロンVIはヒーローとしてもアイドルとしてもトップでなければ!」
「そうですよ! アポロン区の象徴であり誇りであるアポロンVIに敗北は許されません!!」
「そ、そうか……」

部下二人に熱く言われて、アポロンVIことアポロニオは若干引きつつも、ハロウィンパンクラチオン広報用経費の稟議書に決済印を押下した。そして、一つため息をつく。

「……アレス零とハデスIVがいるのだから、そろそろ私もアイドル部門ではなくグラドル部門に移動しても良いのではないか?」
「?」
「?」
「待て、なんだその『何言ってるんだこいつ』みたいな顔は」

アポロニオに睨まれた部下の二人はすっと目をそらした。何をどう考えたら自分がグラドル部門にエントリーできると思ったのか……ああ、中身の年齢か、と部下は遠い目をしながら思った。グラドル部門にエントリーしたいなら、せめて体に凹凸が出来てから言って欲しいところだ。

「ま、まあとにかく、もうアイドル部門にエントリー済ですから……!」
「もう衣装もそのつもりで用意してしまいましたし……」
「む……」

なら仕方ないか、と納得してくれたアポロニオから見えぬところで部下二人はそっと視線を交して安堵した。

今年の衣装は吸血鬼。アポロンVIほど毎年出場し続けたゴッドナンバーズは他におらず、そろそろネタ切れ感がある。そこで、「太陽を掲げるアポロンVIが吸血鬼はだめではないか?」と最後まで抵抗したアポロニオをどうにか説き伏せて、ついに封印を解いたのだ。

オーソドックスに黒のマントと紳士服。わざわざ青白く見えるメイクと口元に鋭い牙。赤のカラーコンタクトまで使う徹底っぷりだ。アポロンVIのコスチュームである半ズボンを取り入れるかどうかは非常に意見が割れたが、アイドル部門だし……の声に負けて半ズボンになった。金持ちのお坊っちゃんに見えてしまった人はアポロンフォースが直々に教育的指導を行うので安心だ。

ポスターの出来上がりに満足そうなアポロンフォースのメンバーたち。アポロン区民ほぼ全員の票は確実として、後は他区の票をどれだけ取り込めるか。アレス零やハデスIVという新星が現れた今年は、厳しい戦いになるだろう、と。

そして、その予想は悪い方に当たった。

『エリュシオンホールディングス、アレス零への全面支持を表明!!』

夕方のトップニュースでもたらされたその速報に、アポロンフォースは色めき立ち、急遽作戦会議が開かれることとなる。

そしてここ、とあるエリュマでも一人の長身男が店長(あだ名)に食ってかかっていた。

「ちょっと店長! どういうことなの!?」
「どういうことも何も……アレス零の、アレイシアさんの晴れ舞台ですよ? 全人類にその魅力を伝える良いチャンスですし」

はっはっは、と笑って店長(あだ名)はヴァッカリオを見た。頭にはかぼちゃを被り、黒のマントを羽織った立派なジャック・オー・ランタンの仮装だ。おかげで、声が聞き取りにくい。店長、と書かれた名札がなかったら本人ともわからないだろう。

「経営権手放したんじゃなかったのかよ!」
「経営権は手放しましたが、口出しする権利は多少残っていますし、創業者の肩書は返上してないものでしてね」
「大人げねえ!」
「なんとでもどうぞ? 今年のハロウィンパンクラチオンはアレス零の優勝です! ご覧なさいこの可愛らしい姿を!!!!」

ばっ!と店長(かぼちゃ)が腕を広げた先にはハロウィンパンクラチオン用の、フランケンシュタインのコスプレをしたアレス零のポスターがあった。
アレスフォースはまだ組織されておらず、現所属先であるヴァンガードと英雄庁が協力して作成したものだ。

フランケンシュタインらしく、顔に傷が描かれているものの、いつもどおりの元気いっぱいの笑顔。頭に刺さった釘のようなものはむしろ髪飾りのようにリボンが巻かれて可愛らしくアレンジされている。そして、なんと言っても特徴的なのは大男をイメージしたぶかぶかのコートを着ているという点。

つまり。

「萌え袖ッッッ!!!! ありがとうございます!!!!!」

店長(かぼちゃ)は床に膝をついて祈りを捧げた。この衣装を選んだゾエルに、だ。

ちなみに、神様に祈られたゾエルはたまたまコーヒーを買っていた自販機の当たりが止まらなくなってめちゃくちゃ焦っていた。

「クソっ……だがしかし、トップオブヒーローである太陽神アポロンVIが膝をつくなんてあっちゃいけないんだ……! アポロンVIは沈まぬ太陽! 曇りも陰りもダメなんだ!!」
「うわっ出たよ激重ブラコン」

思わず店長(プロメトリック)になってしまったが、それには構わずヴァッカリオは何かを決意した熱い光を瞳にたたえると、エリュマを飛び出していった。向かう先は英雄庁。

『ディオニソスXII、グラドル部門への参戦を表明!!!なお、得票は全てアポロンVIに譲渡するとのこと』

10年振りに復帰したディオニソスXIIの参戦にオリュンポリスは沸きに沸いた。

堕落したヒーローらしく、なのか、その仮装は悪魔。頭には金色の髪を掻き分けて鋭い角が二本生え、逞しく鍛え抜かれた背中からは大きな蝙蝠の様な翼が生えている。顔出しNG、のディオニソスXIIであったから、ポスターでも背中側しか写っていない。それでも、やや俯きがちに振り返りかけた横顔は整った鼻筋と悪魔の牙を見せつけ、老若男女問わず全人類が「ステキ! 抱いて!」と口走るほどの色気をたたえていた。

そしてアポロンVIが大絶賛したことにより、アポロン区内にもそのポスターは貼られる事になった。グラドル部門の投票はディオニソスXIIへ、アイドル部門の投票はアポロンVIへ、が今やシュプレヒコールとなってアポロン区の各所で発生している。

それを建物の影から見ていたネーレイスは親指の爪を噛むと、ぱっとスカートの裾を翻し走り去った。向かう先は、ハロウィンパンクラチオン未参加の父がいるポセイドンフォース。

『ポセイドンフォース、ハデスIVへの全面支援を表明!!』

その一報に驚いたのは他でもない、ハデスフォースだ。先代ハデスIVの娘、エウブレナが正式にハデスIVに就任して初めてのハロウィンパンクラチオン。どうにかして優勝させたかったのだが、敵はアポロンVI&ディオニソスXII、それからアレス零withエリュシオンホールディングス。あまりにも、戦力に差がありすぎた。

そこへ電撃の如く現れた強力な援軍。ポセイドンIIはかねてからこの催し物には参加しておらず、ポセイドン区はまるごと浮動票となっていたのだ。それがまるまる、ハデスIVへ流れ込んでくることになる。

「エウブレニャ! 私のライバルである貴女に負けは許されるなくってよ!? バックアップはお任せなさい!」
「ネ、ネーレイス……! ありがとう……!」

頼もしい幼馴染の言葉に、エウブレナは目を潤ませる。が、しかし。

「確かにバックアップは嬉しいのだけど……その、この衣装は露出が過ぎないかしら?」
「??? いつも痴女みたいな恰好しているのに何を言ってらっしゃるの???」

ネーレイスに真面目な顔で言われて、エウブレナは「これは父親リスペクトです」といつものような反論せずに黙った。まさか、幼馴染にすら痴女呼ばわりされるとは……。

まあ、とにかくとして。ハデスIVの衣装は、素肌に包帯を巻いたミイラ男、ならぬミイラ女だ。アイドル部門でありながら、他参加者二人とは全く異なる肌の露出の多さ、見えそうで見えないチラリズム。ポスターを手に取った人々は満場一致で「グラドル部門の間違いでは?」と思う程の大人の色気だった。ただ、グラドル部門に参加するには少し胸の辺りが寂しい、という声も聞こえたが。そう言った声はほとんどがハデスフォースとポセイドンフォースによって駆逐済みである。

「アイドル部門で残りの二人に勝つにはやはりオリジナリティが重要でしてよ!」
「オ、オリジナリティ……?」
「そう! アイドル部門にはない色気を全面に出していくのですわ!! 特にアポロンVI様に投票しない男性票の取り込みは必須!」

ネーレイスは拳を突き上げた。その姿をエウブレナは眩しそうに見上げた。確かに、ネーレイスの作戦は良さそうに思える。グラドル部門では毎年アフロディテIXに投票しているが、アイドル部門は棄権する、という層も少なくはない。……何しろ、アイドル部門はアポロンVIしかいなかったので。

そう言ったところに現れた、セクシーな姿でありながらアイドル部門にエントリーしたハデスIVは実に良い投票先になるのだ。

「エウブレナ、まだ戦いは始まったばかりでしてよ!」
「ええ……そうね、ハデス区の市民のためにも、頑張るわ!」

先代ハデスIV亡きあと、ずっとハロウィンパンクラチオンに参加できなかったハデス区の市民のためにも、と言われていたエウブレナは決意を新たにする。たとえ、痴女マシマシと幼馴染に言われようとも、その程度は大したことないのだ!

「……と、エウブレナちゃんも頑張るね~。グラドル部門に来なくてよかった、ってカンジ?」

一人、魔女の格好をしたアフロディテIXは肩をすくめた。黒のとんがり帽子に、黒のマント、そして黒のワンピース……だが、胸元は大きく空いたビスチェデザインだ。どこかのアポロンVIと違って、凹凸がはっきりしているアフロディテIXの体のラインぴったりに沿った黒のワンピースは、スタイルの良さをより一層引き立ててくれている。

そして、ほぼ毎年お決まりの投げキッスポーズ。それに胸を撃ち抜かれる男性は多く、憧れの眼差しを送る女性もまた多い。

「ま、なんにせよ、グラドル部門は今年もあーしだけだし? あとはアイドル部門の戦いでも高みの見物~」

ポスター撮影を終えてハロウィンパンクラチオンの様子をあらかた部下から聞いたアフロディテIXは鼻歌交じりにハーブティーを入れてもらっていた。

ディオニソスXIIがグラドル部門に参加するというニュースを聞いたときはどうなることかと思ったが。得票はすべてアポロンVIに譲渡するということで、実質形だけのグラドル部門参加だ。となると、今年も参加者は一人のみ、優勝間違いないし。

それでも、新しい風が吹いた今年のハロウィンパンクラチオンについては気になるところもある。

「ね、それで魔法使いは誰に投票すんの?」

魔女の仮装をしたアフロディテIXそう聞かれた「本物」の魔法使いは黒猫のウィズと顔を見合わせた。少し悩んだ後に、もったいぶって口を開く。

――とりあえず、カードの性能次第、かな

この魔法使いは、ビジュアルには興味がないタイプだったようだ。アフロディテIXと魔法使いの間に広げられた各ゴッドナンバーズの仮装ポスターが寂しそうに鎮座していたのだった……。