店シア。友情出演ディオニソスXII。とある事件で凹んでいたアレイシアを立ち直らせた店長(あだ名)がついでにブチギレてプロメさんモードになって犯人を勝手に裁いた後にアレイシアといちゃいちゃする話です(???)いつもどおり捏造設定だらけだし、相変わらず店長が神の力使ったりする。
店内にいた客を見送り、店長(あだ名)はイートインで項垂れるアレイシアの下へとやってきた。
「今日は元気がありませんね。何か嫌なことでもあったのですか?」
「店長……」
笑いかけながら、注文のエリュマバーガーを渡す。アレイシアはそれをありがとう、と受けったものの、顔色は暗いままだった。
「私でよければ、話を聞きますよ? ……機密なのであれば、無理に聞き出そうとはしませんが」
「んー……ちょっと待ってね、食べながら考える」
トレードマークの矢印の様な髪をへにょり、と倒したままのアレイシアはエリュマバーガーをぱくついた後に、しばらくして店長(あだ名)を見上げた。
「あまり詳しいことは言えないんだけど……」
「いいですよ。もし、機密をうっかり漏らしたとしても、私は絶対に誰にも言いませんから」
「うん……ありがとう、店長! じゃあ、お話聞いてくれるかな?」
そう言って、アレイシアが語り出した内容は――第三者が聞いても、眉を顰める者であった。
最近、老人を狙った恐喝・強盗が多発しており、それらを警察と合同でヴァンガードが捜査していたのだという。
アレイシア達神話還りの力を使った体力自慢の張り込みと、警察の地道な情報収集が功を奏して無事に犯人は逮捕された。
しかし、問題はそこから。
逮捕された犯人は、翌日に即釈放されてしまったのだ。なぜ、とゾエルを問い詰めると、「警察幹部の息子で、上の方から揉み消しにあった」と苦い顔をしながら答えてくれたという。
「それは……」
「うん、ボクもね、そんなのダメだ! って思って。一緒に捜査した警察の人もすごく苦しい顔してて。……本当なら、ゴッドナンバーズ権限持ち出してもいいかな、って思ったんだけど」
「犯人が、神話還りではなかった、から」
「……うん」
英雄庁が管轄するのは「神話還りの犯罪者」であるヴィランのみ。例え、ゴッドナンバーズと言えども、ヴィランではない犯罪者を裁くことはできない。それは、警察庁の管轄なのだ。
アレイシアはテーブルに突っ伏すと、子供の様に足をバタバタとさせた。
「くやし~! みんなで頑張ったのに! それにおじいちゃんもおばちゃんもとっても怖い目にあったんだよ!? いくらお金を返したから大丈夫って、そういう問題じゃないと思うんだよね!」
「そうですね、アレイシアさんの感性が正しいと思いますよ」
「エウさんもネーさんも怒ってるし、ボスも上に掛け合って警察庁にメスを入れる、って張り切ってるけど」
言葉を区切ったアレイシアは、バタバタさせていた足をぴたりと止めて、子供が泣くようにテーブルの上で丸くなった。くぐもった声で、言葉を続ける。
「でも、ボクには何もできないんだ。怒ってる、そんな卑怯な事して、罰から逃げようとしている人たちにすごく怒ってる……だけど、ボクには何もできないし……ッ」
震える小さな肩。圧倒的なアレス零としての力と、正義の心を持ちながら人間の理に縛られるアレイシア。
店長(あだ名)はその肩にそっと手を置いた。
「アレイシアさん、アレイシアさんは何もできないとおっしゃいますが……できることは、きっとありますよ」
「でも……」
「そうですね、例えば、被害に遭われた方々にパトロールとして様子を伺いに行くのはどうですか? 他にも、防犯意識を啓蒙するキャンペーンを行うであるとか」
「店長……!」
ガバッと顔を上げたアレイシアに店長(あだ名)は微笑みかける。どうか、アレイシアがその責任と悪を裁けなかった自分の罪に押し潰されないように。
「直接的なことは、確かに今のアレイシアさんには難しいでしょう。そこは残念なのは間違いありません。ですが、それで諦めてしまうのはアレイシアさんらしくないですよ。それでも負けずに、自分ができることを自分の限界まで頑張る。そういうところが、私は好きですよ」
「……うん」
よし、と呟いてアレイシアは椅子から飛び降りた。エリュマバーガーの包み紙をくしゃくしゃに丸めて、最後にぎゅっと押し潰す。力を入れて、自分の気持ちに決心をつけるかのような動きに店長(あだ名)は目を細めた。
「ありがとう店長! そうだね、ここでうじうじしてても何も始まらないもんね!」
「いえいえ、お話を聞いたにすぎませんよ」
「よーし、さっそくパトロールにでかけるぞー!!」
「その意気ですよ、アレイシアさん!」
アレイシアはニッと笑うと、店長(あだ名)に手を振って走り出した。もう迷うことはない、と言わんばかりの、ピンと伸びた背筋とスキップするような歩幅。
「アレイシアさん!」
その後姿に、思わず、店長(あだ名)は声を上げた。アレイシアが不思議そうに足を止めて、振り向く。店長(あだ名)は意識して、怖い顔にならないように気を付けてかける言葉を選らんだ。
「元気なアレイシアさんが私は好きですが……疲れた時は、いつでもいらっしゃってください。お話も聞きますし、温かくて美味しいエリュマバーガーもご用意してお待ちしております」
「! 店長、ありがと!! 好きだよ!」
「っ!!!」
唐突に言われた言葉に、店長(あだ名)は目を白黒させてから、顔を真っ赤にした。そして、もう店外に走り出したアレイシアの背中に、大きく息を吸って、腹の底から叫ぶ。
「またのご利用をお待ちしております!!」
薄暗い路地裏にて。一人の男が「戦利品」を道路にぶちまけて、ニヤニヤと薄汚い笑みを浮かべながら物色していた。
その背後に、コツコツ、と革靴の音が響く。驚いた男が振り返ると、そこには銀髪と赤眼の、すらりとしたスーツ姿の青年が立っていた。無感情な瞳で、男を見下ろしてくる。その、高みから見下ろすような視線を不快におもった男は叫んだ。
「テメェ何見てんだ! やんのかこの野郎!!」
「やるも何も……これから行われるのは、ただの神罰だ」
「はあ??」
「人が裁かないなら神が裁く。そして、神はエゴでできており――貴様の罪状は、私を不快にさせたこと、だ」
「なにを……うぎゃぁっ!?!?」
男が突然悲鳴を上げて、腹を両手で押さえて転がりまわる。男の両手の下にある腹は、何かが蠢くようにボコボコと形を変えていた。「異形に寄生された」という表現が最もふさわしいだろう。
パチン、と青年が指を鳴らすと、途端に男の腹部は静かになる。男は激痛に涙を流しながら、まだ呻いていた。そこに、青年は静かに神の言葉を告げる。
「貴様が自身の罪を認め、反省するのであれば人間としての生活が送れるだろう」
「は、なにいって……」
「しかし、罪から逃げ、罪を重ねる限り、ソレは貴様の罪を貪り続け成長する」
「へっ俺の親父に頼めば揉み消しぐらい……あぁぁっ!?!? こいつっ!! ぎああぁぁっ!!!」
男の言葉の途中で、また「異形」が蠢いた。まるで、男の言葉を、その罪を、感じ取っているかのようだった。
しばらく、のたうち回っていた男だが、時間が経過すると「異形」は大人しくなった。息も絶え絶えになりながら、冷たいアスファルトに這いつくばって青年を見上げる。
「罪を認めよ、人間よ。それが神の裁きだ」
「……っ!!」
男は息を呑んだ。神の代行者とも言われる、ゴッドナンバーズとも違う、絶対的なオーラを青年から感じる。跪いて、今すぐにでも許しを請い、祈りを捧げなければいけないほどの。
「ま、まっ……」
男が地面に這いつくばったまま伸ばした手に、背を向けて青年は去って行く。――まるで、神に見放されたような気持が男を襲った。
「ぐ……」
ぐらり、と傾いた体に、慌ててプロメテウスはビルの壁面に手を付いた。神の力をほとんど失った体で振り絞った神罰は、人間の体には大きな負荷をかけていたのであった。しばし、眩暈をやり過ごしてから息を吐いて立ち直る。
「……いるんだろう、ディオニソスXII」
「なんだ、バレてたか」
「最初からずっと見ていたクセに。私を、英雄庁に報告するか?」
影から現れたディオニソスXIIは、その言葉に肩を竦めた。
「事実は報告するが、口添えはするさ。どのみち、英雄庁のだってあの親子には手を焼いていたんだ、これぐらいは見逃してくれるだろうよ」
「……全く、人間というものは本当に度し難い。決めたルールを捻じ曲げて自己の利益を図るかと思えば、ルールを振りかざして他人を嬲る」
「仕方ないだろ、俺達は人間そうやって生きてきたんだ」
ほら、とディオニソスXIIはまだ足取りのおぼつかないプロメテウスに肩を貸す。少しばかり迷ったプロメテウスだったが、大人しくディオニソスXIIに体重を預けた。
「家まで?」とディオニソスXIIが尋ねれば、プロメテウスは首を振った。
「……次のシフトが入ってる」
「プッ……いやあ神様も大変だねえ、度し難い人の世で生きていくにはお金がないとね~~」
「クソッ! どいつもこいつも金金金!!! 人間の心はないのか!」
「え、何、またアレイシアに貢いで電気止められたの?」
ヴァッカリオがニヤニヤしながら聞けば、店長(あだ名)はきまり悪そうにそっぽを向いた。どうやら、ゴッドナンバーズがデザインされた「アイシングクッキー(ブラインド)」をしこたま買い込んだらしい。
……ちなみに、アポロンVIのクッキーはバキバキに割って鳩の餌にしたのだとか。ゴミ箱に捨てないあたりが、店長(あだ名)らしいな、と思いつつ、アポロンVIのクッキーを割るという暴挙にヴァッカリオは殺意を覚えたとかなんとか。
そんな、人間らしい他愛もない会話をして店長(あだ名)をエリュマまで送る。何とか、時間と共に体力も回復してきたようだ。無事にバイトはできそう、と判断した店長(あだ名)がエリュマの裏口のドアをくぐろうとする。
「あ、そうだ」
「なんだ?」
「助かったぜ、アレイシアのこと。店長じゃなきゃ、言葉も響かなかっただろうし……これからもさ、アレイシアを支えてやってくれよ」
「……貴様に言われなくても」
一応、おいらだって隊長としてねえ……!、と言い募るヴァッカリオを放置して店長(あだ名)はするりと裏口のドアをくぐった。
「支える、か……」
上着を脱いで、ロッカーに掛けながら先ほどの言葉を思い返す。神として人を導くのではなく、同じ人間として支える――人間は、そうやって生きてきたのだろう。
そして、自分もこれからはそうやって生きていくのだ。
ある日の昼下がり。バタバタと駆け込んだ来たアレイシアがレジにいる店長を見つけて、ぱっと笑顔を輝かせる。
「店長、エリュマバーガー2つ!」
「はい、少々お待ちくださいね。……何か、いいことありましたか?」
「うーん? いいこと、ではないかもしれないけどね、前に言ってた……あの、逮捕したけどすぐ釈放されたって人」
なんか、この前聞いたら自首してきたんだって、とアレイシアは首を傾げながら続けた。エリュマバーガーの準備をしながら、店長(あだ名)は「そうですか」と静かに相槌を打つ。
「でね、それはそれで、ちゃんと反省してくれてよかったな、って思うんだけど。その事件の被害者のおじいちゃんおばあちゃんの家とかにボク、たくさんパトロール行ってて」
「はい」
「それで、今日はいつもありがとうね、って言われて、花束貰ったんだ! しかもね、アレイシアちゃんが来てくれるから、最近は安心して外出できるって」
「それは、良いことですね」
アレイシアはニコニコと明るい笑みを浮かべて、今日あった嬉しいことをいろいろと話してくれる。
辛いことや悲しいことも話してくれ、とは言ったが、やはり、幸せそうに楽しかったことを話してくれるアレイシアの方が良い。店長(あだ名)はエリュマバーガー2つをアレイシアに渡しながら、アレイシアを幸せにしてくれている人間たちに感謝した。
「店長もこの前お話聞いてくれて本当にありがとう。何か吹っ切れたよ!」
「少しでもお力になれたのなら良かったです」
「ううん、少しどころじゃないよ、店長のおかげだって! えへへ、それでね、ちょっと恥ずかしいんだけど……」
そう言って、アレイシアは小さな花束を取り出した。きっと、額にすれば子供のお小遣いで買える程度の可愛らしい花束。
「本当はね、ヒーローから市民への物品提供は収賄の可能性があるから……良くないんだけど……ボスと隊長に調べてもらって、この程度の少額なら、大丈夫だろうって」
「ア、アレイシアさん……」
「店長の、白い髪と赤い目が綺麗だなって。それで、エリュマの制服も似合うなって思って、白と赤のお花で、青のラッピングしてもらったんだ!」
店長(あだ名)は手を震わせながら、その可愛らしい花束を手に取った。生花の優しい香りが鼻をくすぐる。何より、自分をイメージした、というカラーリングがなんだか心すらくすぐってくる。
「ありがとうございます、一生の家宝にします……!!」
「でも生花だからすぐ枯れちゃうよ?」
「ブリザードフラワーにします!!!!」
いいよ、そこまでしなくても、とアレイシアは照れ臭そうに笑った。つられて、店長(あだ名)も照れたような笑みを浮かべる。
そこには、ただの人間同士の、柔らかな幸せだけがあった。