プロメテウス・ザ・リベンジャー - 8/8

「いらっしゃいませ~!」
「店長!エリュマバーガー二つ!」
「はい少々お待ちください~!」

いつも笑顔の好青年、店長(あだ名)にエリュマバーガーを注文するとアレイシアは魔法使いを連れてフードコートの椅子に座った。
エリュマの窓から見えるはずの英雄庁ビルは跡形もない。実際のところ、どう考えても崩壊の原因の半分以上はアポロンVIだったが、本人はしれっと「巨神の登場によりすでに崩壊していた。あのまま、中途半端に残す方が危険だと判断した」と答えたのだという。
さらに追加で、
「当時の英雄庁のトップは私であり、私が良いと判断したのだから問題ない。何か文句があるのか?この度の事件の発端となったフィールド発生装置をやすやすと屋上に設定された上に犯行グループにあっさり制圧された英雄庁の皆様方??」
と、大変良い笑顔で圧を掛けていた、とその場に居合わせたヴァッカリオがのちにヴァンガードベースでぐったりしながら再現してくれた。まさか、物理的に叩き潰すのを本当にやるとは思わなかった、と何回もぼやいている姿を魔法使いは目にしている。
それから、別方面で世界を騒がせたプロメトリックととある二人の戦士は、誰かが気づいたときにはすでにすっかり姿を消していたらしい。その追及についてもアポロンVIは非常に「パワープレイ」で何も問題はないね、いいね?と押し通したのだとか。こちらは、ゾエルが珍しく遠い目をしながら静かに語ってくれた。
エリュマバーガーを奢ってもらいながら、魔法使いは今日の予定をアレイシアに尋ねた。とりあえず、エリュマに集合!ということしか聞いていない。

「なんか、アポロンフォースで慰労会やるんだって。エウさんとネーさんもパトロール終わったらここに来るって。んで、ボスと隊長とあと、ハルさんは先に行ってるって」

なるほど、と魔法使いは頷いてエリュマバーガーから師匠の苦手なものを丁寧に選り分けて、ウィズの前に差し出した。ガツガツ、食らいつく師匠とアレイシアを見て、この後ご馳走があるのにいいのかな、とぼんやりと思った。

「そういえば、あの男の人、最近意識戻ったって。これから、裁判とかになるんだってさ」

アレイシアはエリュマバーガーを頬張りながら何でもないことのように言ったが、少しだけ、その目は言い様の知れない青い色をたたえていた。
漆黒神器を使用して巨神となった男だったが、アレイシアが撃ち抜いたのは漆黒神器の部分だけだったらしい。おかげで、本人は一命をとりとめ、今の今まで眠っていたのだという。

「アレイシアはどうして漆黒神器の位置がわかったにゃ?」
「うーん、なんか、嫌な色をしたものがちょっと見えたから。魔法使いさんの、あのディオニソスXIIの攻撃のおかげだよ!」

すっごくカッコ良かった!とアレイシアはキラキラと目を輝かせて、当時の状況をもう何回も繰り返し語ってくれている。
ちなみにその景色はヒーローに義務付けられている身体カメラによって、アレイシアやエウブレナはもちろん、その場にいたアポロンVIやアフロディテIXによって撮影されていた。アレイシアだけでなく、アポロンVIもその動画をこっそりと自分用にコピーして家で夕食のお供にしているのだとか。
まあ何はともあれ、いきなり決戦の場に召喚された割には今回も無難に乗り切ったと思う、と魔法使いは師匠の残したエリュマバーガーを食べながら自画自賛するのであった。

とある刑務所の、独房にて。誰も訪れることのない静かな空間で、男はひたすらに瞑想をしていた。そこに、いつもの看守とは異なる足音が響く。おや、と思い目を開けると、そこには白い革靴があった。

「!プロメトリック……!」
「その名前で呼んでくれても構わないが……神の力を失った今、私はただの人間だ」

しかし、とその青年はスーツが汚れるにもかかわらず、床に膝をついてしゃがみこむと男と視線の高さを合わせる。

「よくぞ、この永き地獄を耐えきった、私の半身よ」
「!!」
「もはや神話の時代は終わった。神の力はなくなったのだ。これからは、人として生きるがよい。そして、私の想いを、執着を、捨てることなく最後まで昇華してくれたことに大いなる感謝を。……ありがとう」

男の目から、涙が溢れ出す。滲む視界の向こう、もう一度目を擦った先には、もう誰もいなかった。