プロメテウス・ザ・リベンジャー - 2/8

トン、と軽い音を立ててアポロンVIがアポロンフォースの庁舎前へと舞い降りた。

「お疲れ様です。対象ヴィランの捕縛、完了しています」
「ああ、後は任せる」

駆け寄ってきた副官と一言、二言、言葉を交わし、アポロンVIは急に空を見上げた。

「?どうかされましたか?」
「いや……何か良くない気配を感じたのだが……」

真昼の太陽を眩しそうに見上げながら、自分でそう言ってからアポロンVIは首を傾げた。副官もつられて空を見上げるが、本日は快晴なり。雲一つなく、青空が広がっている。
気のせいだったのかもな、とアポロンVIが笑おうとした瞬間、アポロンフォースのサイレンが鳴り響いた。瞬時に、全身に緊張感を走らせて臨戦態勢を取る。

『エマージェンシー!上空より飛来物を確認!エマージェンシー!上空より飛来物を確認!』

サイレンが終わると同時に、緊迫した女性の声がする。飛来物?と副官が繰り返すと同時に、アポロンVIはアポロンシティで最も高い、アポロンフォース庁舎の屋上へと飛び上がった。
さきほどまできれいに晴れ渡っていた空に、いくつもの異物を発見する。それを見た瞬間、アポロンVIはぶわりと鳥肌が立つのを感じた。予知を司るアポロン神の神話還りの力が発揮されたのかもしれない。

(あれは壊さなければならない……ッ!)

起動したままの神器のエネルギーを手元に集め、弓を引いて飛来物に照準を合わせた。
すぅ、と息を吸うと光り輝く一筋の矢を放つ。それは吸い込まれるように謎の飛来物へと飛んでいき、着弾し、破壊。空中で爆発したのを見届けたアポロンVIだったが、他にも複数の飛来物を目視して顔をしかめた。

「フォースメンバーに告ぐ!総員、スクランブル!敵性を確認!」
『!?了解!』
「飛来物の対応は私が行う!市民の緊急避難を急がせろ!」

地上で、何が起こっているかもわからず状況把握に手間取っていた部下達に指示を飛ばし、アポロンVIは再度、矢をつがえて迫りくる複数の飛来物を次々に撃ち落とした。
時間にしてわずか三分程度のことだっただろうか。ミサイルの様に飛来してきた物体はぱたり、と止まった。アポロンVIは一つ、息を吐いて弓矢を下ろす。とりあえず、地上への被害はないだろうが……問題は、それよりもっと別のところにありそうだった。

「全く、一体何がどうなっているんだ……」

そうぼやくアポロンVIの視線の先には、英雄庁ビルの屋上を中心として広がる、バリアのような謎の光があった。

アポロンフォース内、会議室Aルーム。深刻そうな顔をしてスーツ姿のフォース職員とアポロニオが頭を寄せ合っていた。

「失礼するよ!」
「ああ、よく来た」

ドアを開けて入ってきたのは独立特殊遊撃部隊ヴァンガードの司令であるゾエルと、隊長であるヴァッカリオだった。入口付近の椅子に二人揃って座る。すぐに目の前の端末に資料が転送された。

「紹介しよう。こちらにVTOLの開発ミーティングのために訪問していたヴァンガードのゾエルとヴァッカリオだ。今回の一大事に、ヴァンガードとは共同戦線を張ることにする」
「主導はアポロンフォースだ、ウチは火力だけならピカイチだがそれ以外は物足りねェからな」
「うまく使わせてもらう」

ゾエルの女性とは思えない汚い口調に、アポロンフォースのメンバーは何人か眉を顰めたがトップであるアポロニオが何も言わなかったので、聞かなかったことにした。今は、それよりも重大な問題がある。

「で、状況は?」
「最悪だ。……説明を」
「はっ!」

一人、立ってこまごまとした雑用を請け負っていた副官が直立不動の姿勢を取ってから、おもむろに口を開いた。手元の端末を操作すると、テーブル中央にオリュンポリス全体の地図が表示される。

「本日、午前十一時、アポロンフォースのレーダーにて飛来物を捕捉。ほぼ同時刻、アポロンVIによりアポロンシティへの飛来物はすべて撃ち落とされました。現在、落下した飛来物の残骸をアポロンフォースで回収し、解析中です」

そちらについては解析結果をのちほどまとめます、と言って副官は話を続けた。

「飛来物は他のシティにも襲来していたようで、そちらは迎撃に失敗した模様。現在、英雄庁屋上を中心とし、それら飛来物を媒介として巨大なシールドが形成されていることを確認しております」
「他のシティって?アポロンシティ以外?」

ヴァッカリオがテーブル中央の地図を眺めて発言する。
副官が頷いて端末を操作すると、地図はアポロンシティ以外の部分を真っ赤に塗りつぶし、英雄庁がある場所に明滅するポインタを表示した。真っ赤に塗られた部分が敵の支配下にあるところ、そしてそうでないところはアポロンシティのみ。

「つまり、我々は孤立している、ということだ」
「はい。ネットワークは完全に寸断されており、他フォースや英雄庁とは連絡が取れておりません。また、シールド自体に攻撃性は無いようですが、通り抜けることができません……壁のようなもの、と思っていただければ早いかと」

なるほど、と呟きながらゾエルは素早く各報告書に目を通した。さすがアポロンフォース、この短時間にもかかわらず、状況がよくまとめられている。
人的被害はなし、落下物による損壊が複数件。ネットワークの寸断による混乱が各所で発生。シールドへの対抗策は要検討。市民への対応はアポロンフォースのメンバーが実施中。

「で、敵さんの声明ってのがコレかい」
「……ああ、オリュンポリスの放送局を乗っ取ったのだろうな。市民の家庭のテレビや商業ビルのモニターにも一斉に表示された」

ゾエルは動画を再生する。流れ始めた音声が会議室内に響いた。

『我々はプロメテウスの神話還りである!孤立しているアポロンシティ……アポロンVIに告ぐ!ただちに降伏し、その場を我々に明け渡したまえ!我々は来るべき時に備え、古代の神々を復活させる方法を確立した!!それがこのオリュンポリス全体を使用した――』
「……なげェな、簡単にまとめると?」

ゾエルは演説を早くも聞き飽きたのか、モニターから顔を上げるとアポロニオを見た。少しだけ肩をすくめると「要はさっさと降伏しろ、さもなくば市民を殺すぞ、ということだ」と面白くなさそうに言い放った。

「で、ご指名のアポロンVI様としては」
「聞き入れるわけがないだろう。徹底抗戦だ」
「孤立してるっていうのによくやるねえ……勝算あるの?」

黙っていたヴァッカリオが口を開く。その視線を受けてアポロニオはにやりと笑って返した。

「ないから、お前たちを呼んだんだ。知恵とご自慢のパワーを貸せ」
「相変わらず無茶苦茶!」
「さっすが天下のアポロンVI様は言うこともやることも極端だねェこのxxxx頭が!」
「誉め言葉として受け取っておこう」

ヴァッカリオとゾエルの呆れたような言い分をアポロニオはにっこり、大変良い笑顔を浮かべて受け流す。
話を戻すぞ、とアポロニオは咳ばらいをして犯人グループの目的について語った。犯行声明のありがたくも長ったらしい演説をまとめると、彼らはプロメテウスの神話還りを名乗り、古の神を復活させることが目的らしい。どういった技術を用いたのかは現時点では不明だが、恐らくオリュンポリス全体を何らかの儀式の場とするのではないか、と。そのためにもアポロンシティを手中に収めたいようだ。

「ツッコミどころがありすぎる……」

ヴァッカリオは頭を抱えた。なぜ神の復活を、どの神を、どうやって、デメリットは、オリュンポリスへの影響は……もう、謎だらけで全部丸めてエリュマのゴミ箱に捨てたいぐらいだ。

「犯人グループは会話する気もないようだぞ。こちらから交渉のメッセージを送ってみたが、無反応だった」

アポロンフォース庁舎の屋上から、空中にメッセージを表示させて交渉の意志を示したが反応なし。それ以外に向こうと連絡を取る手段がないため、意志の疎通は不可能、と判断したとアポロニオは言った。

「現時点での犯人の第一目的はアポロンシティの奪取だ。フォースの所属ヒーロー達はすべて戦闘配置に着かせているが、今のところ敵からの攻撃はないな。向こうが余計なことをやらかす前に制圧したいところだ」
「アポロンシティ以外の全市民が人質、なんて笑えねェな」
「ああ……一人、二人ぐらいなら見せしめで殺害する可能性もある」

まいったねェ、とゾエルは背もたれに体を預けて天井を睨んだ。
元ヘラフォースの参謀であるゾエルの頭の中では、今わかっている情報からどういった作戦を用いるべきか、の検討がすでに始まっていた。迅速に相手を制圧するにはどうすれば良いのか……シンプルな目標でありながら、非常に難しい、そして取り組みがいのある難題だった。

「最低限、状況と我々の行動方針は理解してもらえたと思う。後は我がフォースの各部門長を紹介する。紹介が終わったら一時間ほど昼食休憩を取ることにする。ゾエルとヴァッカリオは情報の噛み砕きが必要だろう」
「助かる」

では、とアポロニオはテーブルの端から順番に部門長を紹介していった。最後に、立っていた副官を紹介する。それぞれが軽く頭を下げた簡易的な自己紹介だった。

「連絡要員として一人、そちらに同行させる」
「ああ、何かあったらソイツに聞けばいいんだな?」
「そうしてくれ。その他、フォース内は基本的に自由に動いてもらって構わない」
「ウチの奴らにも状況を説明したい、会議室を借りても?」

ゾエルの言葉に、アポロニオの副官が端末を操作して小さめの会議室を一つ抑えた。その会議室の場所をゾエルに教え、同行する連絡要員もその会議室に向かわせる、と副官は言った。さすがの手際の良さにゾエルは少しだけ感嘆した。

「じゃあ、また一時間後に。ここでいいな?……よし、行くぞヴァッカ」
「はいはい」

ゾエルに付き従ってヴァッカリオも席を立ち、二人はミーティングルームを後にした。

「……ずいぶんと彼らを買っているのですね」

集まったアポロンフォースメンバーの中で、最も年上の男性がゆっくりとした口調で言った。自然、部屋中の視線はアポロニオに集まる。

「知らぬ者もいるだろうが、ヴァンガードにはアレス零と次代ハデスIVが所属している。それに、今いたゾエル女史は先代ヘラIIIの右腕だった人間だ。力量としては申し分ない」

ざわり、と室内に軽いざわめきが起きたが、それはすぐにちょっとした苦笑のようなものに取って代わられた。

「まあ、ヴァンガードには我々も以前世話になりましたから……」
「あの時は彼らがいてくれなかったらどうなることだったか」
「全くです。我々ではあのアポロンVI様を止めるなんて到底無理でしたからね」

次々に部門長が言うと、会議室内は緩やかな空気に満たされた。ただ一人、例の事件でヴァンガードにだいぶ迷惑をかけた、と思っているアポロニオだけが苦虫を噛み潰したような顔をしていたが。

「……っとと、ボス、先に行っててくれる?おいらにお客さんみたいだ」
「はあ?こんな時に……まあ、いい。説明にゃあ一人で十分だろ。そのお客さんとやら、丁重にもてなしてやんな」
「おもてなしするような相手じゃないけどね」

そう言ってヴァッカリオはゾエルと別れて、階段の影に身を潜めた。なるべく、誰の目にも留まらないような視覚に。

「……で、何しに来たの」
「身内の尻ぬぐいに」
「うそ、どうせアレイシアのストーキングしてたんでしょ、店長」

声をかけられたスーツ姿の男、とあるエリュマの店長でもあり世間を騒がせたプロメトリック、そして今最もその名前を耳にするであろう神の一人、プロメテウスその人。彼はヴァッカリオの言葉に片眉を上げこそしたが、否定はしなかった。

「とりあえず単刀直入に聞くけど。敵?味方?」
「……非常に癪ではあるが、今日はお前らの味方だ」
「そりゃ心強いね!」

ヴァッカリオが肩を叩く手を煩わしそうに打ち払った。さらに、一歩下がってヴァッカリオから離れる。

「なんだよ、前にアレイシアのパレード一緒に見た時はもっと大人しかったじゃん」
「あの時はエリュマの店長、一市民だったからな。……今日は、プロメトリックとしてここにいる」

へえ、とヴァッカリオは少しだけ逡巡した後にぽん、と一つ手を打った。

「なるほど、『プロメテウスの神話還り』の一人としてこの場にいるわけか。うーん、じゃあ設定は犯人グループのやり方に納得できなくて一人、裏切ってこちらに来たってことでいいかな」
「好きにしろ」

プロメトリック。その名前は、彼が一市民でもなく、神でもなく、ヴィランの親玉として表舞台に立つときに使う名義だ。まあ、使うと言っても、その振る舞いと『プロメテウスの神話還り』という事を結び付けて勝手に名付けられた名前だが。
プロメトリックはすでに討伐されたことになっているから、そのままの顔と声では他の人間と顔を合わせられない、とヴァッカリオが懸念すれば、プロメトリックは一つ、不思議な仮面を取り出して装着したのだった。白の仮面に神話還り独特の紋様が描かれたそれは、軽微ではあるが周囲への認識阻害の効果もあるらしい。

「もはや神の力は残っていないからな。以前はこのような小道具など使わなくても認識阻害ぐらいすぐにできたが……」
「とか言ってそんなの作れちゃう方がヤバいんじゃない?……これ以上変なもの作らないでよ、おいらの寿命が縮む」
「縮むほど残っているのか?」
「お前、それお兄ちゃんがいる場所で言うなよ!?マジで喧嘩になるから!」

ヴァッカリオの慌てた様子に、プロメトリックは仮面の下で軽く嘲笑った。アポロンVIをからかうにはもってこいのネタだが、状況が状況だけにさすがに止めておいた方が良いだろう。……それに、プロメトリックとしても、その一件については思うところがないわけでもない。
会議室の前で、ヴァッカリオが一度足を止める。後ろのプロメトリックを見ると「中にアレイシアもいる」とだけ短く告げた。それに対して、プロメトリックは一瞬だけ息を詰めたがすぐに頭を振って、小さく頷いた。

「はーい!遅れましたー!あと強力な助っ人連れてきましたー!」
「おせぇぞヴァッカ……って誰だ、ソイツは」

ヴァッカリオと共に入ってきた仮面の男を見て、ゾエルはヴァッカリオに説明を求めた。室内にいた、他のアレイシアやエウブレナ、それからネーレイスも不審そうに男を見る。

「『プロメテウスの神話還り』だって。犯人グループと一緒に行動をしていたけど、方針の違いから裏切ってこちらについてくれるってさ」
「はあ!?おま、なんでそんなヤツを……!」

女性陣から悲鳴があがり、ゾエルが代表して驚きの言葉を発した。そりゃそうだよねえ、とヴァッカリオはのほほんと笑って勝手に椅子に座った。

「名前は……えーっと明かせないらしいけど……なんて呼べばいい?」
「……好きなようにどうぞ」

仮面の男が発した声は、明らかに機械を通したものでゾエルは眉を顰めた。それでいて、ちらり、とヴァッカリオの顔を睨みつける。その視線の意味を察したヴァッカリオは、すっと顔をそらした。

「ああ、クソ、一旦休憩!ヴァッカリオとアンタはここに残りな!アレイシア達は席を外してくれ!」

このことはまだ誰にも話すなよ、とゾエルは三人娘と同行していたアポロンフォースの職員に念押しして、会議室から追い出した。エウブレナがちらり、と心配そうにゾエルとヴァッカリオを見たが、ゾエルはその視線に気づかないフリをした。

「さて……どういうことだヴァッカ。それとも、そっちのxxxx野郎に聞いた方が早いか?」
「どういうことと言われてもねえ……」

ゾエルの追及を受けたヴァッカリオは、丸っとプロメトリックにボールを渡すことにしたようだ。プロメトリックの方を見てから自分は話す気がない、というかのように口を閉ざして端末を弄り始めた。
その様子を見て、プロメトリックは少しため息をつく。そして、仮面をゆっくりと外した。

「こうして話すのは初めてだな、コマンダー・ゾエル。君の手腕はかねがねうかがっているよ」
「それはどうも。死んだはずの男がどうして表舞台に?」
「身内の尻ぬぐいに。……彼らは正真正銘、本物の『プロメテウスの神話還り』だ」

ほう、とゾエルは腕組みをして続きを促した。ヴァッカリオも端末から顔をあげ、テーブルに頬杖をついたまま立っているプロメトリックの顔を見上げる。

「神話還りは神の破片を摂取することで能力を得る。……私としては、あの死闘の後に破片はすべて拾い集めたつもりだったが……漏れがあったようだ。しかも、他の神の破片は私が調整して人間に食わせたが、アレは、恐らく未調整でそのまま食べたのだろう」
「なんだい、そりゃ。つまり、アンタの凡ミスってことか」
「……認めたくはないが。あのような集団がいることすら、今まで気づかなかった」
「アンタの馬鹿さ加減を責めればいいのか、ヤツらの立ち回りを褒めりゃいいのか、悩むな」

ヴァッカリオは「こっちのドジッ子を責めた方がいいんじゃない」と茶化したが、プロメトリックに睨まれて肩をすくめた。
そのやり取りを見てから、ゾエルは大きくため息をついた。今こうしていても、この男から殺気や威圧感はない。純粋に、そこに存在しているだけの、すっかりただの人間のようだ。
頭をかきむしったあと、ゾエルはテーブルを叩いて立ち上がった。

「わざわざここにいてヴァッカに渡りをつけたってことは、ウチと協力してくれるんだろう?アテにさせてもらう、どうもこのxxxxな状況を打開するにゃあパーツが足りねェ」
「できる限りは協力しよう。まあ、情報提供程度だがな」

もはや神の力は喪失し、ただの人間に限りなく近いのだから、もう前線で戦えはしない、とプロメトリックはひょうひょうと言うのだった。

「とりあえずさすがにアポロンVIには挨拶させねェとな」

ゾエルの言葉に、プロメトリックは心底嫌そうな顔をした後、静かに仮面を装着した。表情を見せる気はないようだ。その様子をヴァッカリオは面白がっていたが、プロメトリックに椅子を蹴られて仕方なくにやついた笑みを引っ込めた。

「アレイシア達への状況説明は?」
「ほとんど終わってる。まだ行動の内容も決まっちゃいねェし、そうそう難しい話はないからな」

ゾエルは立ち上がると「軽く飯でも食うか」と言って会議室を後にした。
残された二人は顔を見合わせると、ヴァッカリオが困ったように頬をかく。

「店長、その仮面じゃ食事できないじゃん。どうする?」
「適当に食べるから良い。あと、店長と呼ぶのはやめろ、アレイシアにバレる」
「へいへい。後で良い名前考えないとね……この端末、使っていいから。ここまでの状況報告とかがまとめられてる」

じゃ、おいらはランチ行ってくるわ、と言ってヴァッカリオは立ち上がって会議室を出て行った。
残ったプロメトリックはヴァッカリオから渡された端末を操作して各種報告書に目を通す。これまでに公開されている情報と、自分だけが掴んでいる情報の擦り合わせ。この後、顔も合わせたくないアポロンVIと今後について話し合いをしなければならないのだ。なるべく、その時間は少なくしたい。
自分が話すべき内容を頭の中でまとめてから、プロメトリックはふっと姿を消した。