プロメテウス・ザ・リベンジャー - 4/8

副官を連れて顔を出したアポロンVIに、全員が一度手を止めて敬礼をする。それに敬礼で応じたアポロンVIは指揮を執っていた広報部門の部門長を見つけて、乱雑な配線で足の踏み場もない床を身軽に飛び越えて近づいた。

「状況は?」
「順調ですね。あと一時間もすれば起動できます」
「そうか……ヴァンガードのメンバーも組み込めるか?」
「ええ、問題ありません……ただ、心配事はありまして」

広報部門の部門長の後ろから、ひょこりと調達部門の部門長が顔を出して続けた。

「現状では問題点がないのですが、実際に稼働してからの負荷を考えるとかなり不安があります。同時接続数が二十に達するとそれだけで限界に達しそうで……」
「二十か……それはいくらなんでも……」

今、彼らが難しい顔をして準備を進めているのは、アポロンフォースオリジナルのネットワークだ。英雄庁のネットワークが完全に使えない状態では作戦の遂行に支障をきたすし、何より人造神器を使うのに難儀している。英雄庁の許可が無くても、ネットワークにつながってなくても、使用自体は可能だ。だが、機能に制限がかかる上に、事後報告が必須となるので非常に面倒くさい。例えば、いつ、どこで、何のために使ったか……などなど。
英雄庁のネットワークに繋がっていれば申請から許可まで、一連の流れをすべて記録しているからわざわざ事後報告する手間もない。また、市街地で使うには危険な機能なども申請することで解放されている。逆に言えば、ネットワークにつながってなければ、人造神器と言えども大した力は出せないのだ。

「人造神器に関する機能をオミットして、通信のみに限定するやり方もありますが」
「それは最終手段でいたいところだ」

ですよね、と広報部門の部門長はアポロニオの言葉に頷いてから肩を落とした。
アポロンフォースでは以前のプロメトリック事変における神器や人造神器の暴走および停止について大いに憂慮しており、以前からアポロンフォースオリジナルの緊急用ネットワーク構築計画は進められていたのだ。それが今回、早くも日の目を浴びることになり、稼働を前倒ししてぶっつけ本番で使おうということだ。
先見の明がありますね、などと部門長たちは乾いた笑いをあげていたが、実際のところ、まだ計画段階であって実用性は低い。アポロンフォースの技術力だけでは足りず、近くデメテルフォースにも技術協力を仰ぐ予定だったのだ。

「……そういえば、技術方面ではないが、デメテルの神話還りが一人いたな……」
「え?うちのフォースにいましたっけ?」

広報部門の部門長が不思議そうに首をひねる。アポロンフォースだからと言って、全員がアポロン神の神話還りと言うわけではない。しかし、デメテルの神話還りはいなかったはずだ。

「ああ……少し前に、訳ありで引き取った少女がいる。次期デメテルVも狙えるのではないかと言う程の強い神話還りだ」
「今はヴィラン更生施設の方でトレーニングをしていますね」
「……使えそうか?」

端末を操作した副官が、少し連絡を取ってみます、と断りを入れて通信端末を取り出した。
とある事件を起こしたその少女は、神話還りの力を使いすぎてしばし入院していた。そして、その暴走する原因となった双子の妹がアポロン神の神話還りとしてアポロンフォース預かりとなっていた縁で、少女も双子の妹と一緒に更生施設で力を制御するトレーニングを受けていた。
副官が何かしら話しているのをよそに、アポロニオと部門長たちはネットワークについて話を詰める。その少女以外にも人手は欲しいし、ハード面でもいざという時に対応できるだけの技術がない、という話を聞いてアポロニオは深いため息をついた。
立ち上げ当初にヘパイストスフォースやデメテルフォースを招いて協力してもらったのは良いが、まさかこんな中途半端な状態で稼働させることになるとは。

「ふむ、一般向けに呼び出しをしてみるか?たまたまアポロンシティを訪れていたという人間がいるかもしれん」
「しかし、他フォースメンバーへの命令権限はないのでは?」
「それについては解消済みだ。英雄庁が機能不全に陥っている今、権限はすべて私の手元に置くように移譲処理をした」
「それはそれは……」

本来であれば、異なるフォース間では合意が無い限り命令は受け付けなくて良いことになっている。その越権行為になりかねないことを、このアポロンフォースのトップは強引に解消したらしい、自分自身が英雄庁のトップになる、という無茶な方法で。
話し相手をしていた二人の部門長がそれぞれ、頭を抱えているところに副官が戻ってきた。二人の様子を不思議そうに見たが、ああまた何かトップがやらかしたんだな、とすぐに察して憐れむような視線を二人に向けるのであった。

「どうだった?」
「暴走の危険性はなく、使える様です。また、幸いにして教育係としてデメテルフォースから一人派遣されていたので、そちらも召還することにしました」
「それは良いニュースだな!」

ただ、と副官は声を潜めて続ける。

「まだ精神面は若干不安定だそうで、双子の妹も一緒に呼ぶことになりそうですが……」
「問題ないだろう。なんなら、安全な位置で良いから前線に出しても良いぐらいだ。妹の方は人造神器をある程度使えるまでになっていたのではなかったか?」
「はい、その通りです。……では、そのように手配します」

使える人材は一人たりとも無駄にしない。リソースが限られた現在、猫の手でも借りたいぐらいなのだ。アポロンフォースのメンバーはフル動員させているし、何なら研修生も駆り出しても良いぐらいだとアポロニオは考えている。

「しかし、それでもまだ不安要素は多いのだな?」
「ええ……やはり、根本的なところで……」

ため息をつく部門長に、アポロニオも顔をしかめた。あるものだけで賄うと言っても限度がある。どうにか、ヘパイストスフォースかデメテルフォースと連絡が取れれば良いのだが。

「困っているみたいだな、アポロンVI君」
「なんだ、人が困っているのを指さして笑いに来たのか裏切り者の協力者め」

独特の機械音声に振り向いたアポロニオは、プロメトリックともう一人、フードを被った人間がいることに気が付いた。

「裏切り者の協力者、もう一人……いや、二人ほど、追加してもらおうか」
「え~……ども、お久しぶりデス、アイスキュロスです」
「!?なぜここに!?」

瞬時に構えを取るアポロニオに、アイスキュロスはフードを被り直してプロメトリックの後ろに隠れた。様子を伺っていた周囲からも一斉にどよめきと、少なからずの殺気が集中する。

「人手が足りないとヴァッカリオ君が嘆いていたのでね。連れて来た」

プロメトリックは事も無げに言うと、表情の伺えない仮面をアポロニオに向けて大げさに肩をすくめた。

「今、一番欲しい、喉から手が出るほど欲しい人材じゃなかったか?」
「ぐっ……チッ、その通りだ。アイスキュロス、今は何も聞かない、とりあえず手を貸せ」

アイスキュロスを部門長に押し付け、お互いに戸惑っている三人に「ネットワークの構築と運用だけを考えろ!」と激を飛ばすと、アポロニオはプロメトリックを連れ立って廊下へと出た。

「二人、ということはネルヴァも連れてきているのか?」
「もちろん。それはヴァッカリオ君に預けて来たよ。適任だろう?」

ネルヴァことアテナVIIを止めたのはディオニソスXIIとして対峙したヴァッカリオだ。どこまでプロメトリックが把握しているかは知らないが、悔しくも完璧な差配である。アポロニオはもう一度、行儀悪く舌打ちするとプロメトリックを見上げた。

「二人とも、本来であればその場で身柄確保されるべき人間だがな……今は、一時的に罪を無効としよう」
「そうしてやってくれよ。彼らなりの贖罪の一環だ」
「それで許される罪ではない。法に則って正しく裁かれるべきだ」

アポロニオの鋭い視線を受けたプロメトリックはふざけた態度を引っこめ代わりにわかりやすい敵意にさらに殺意を上乗せして、仮面越しにアポロニオを睨みつける。

「……そういうところが本当に嫌いだよ、アポロンVI」
「安心しろ、私もお前に好かれようなどと思ったことはない、自由に嫌ってくれ」

その言葉を最後まで聞く前に、プロメトリックはアポロニオの目の前からふっと姿を消した。ほぼ人間に近くなったとは言え、アフロディテIXの言うところの「ズルい技」はまだ使えるようだ。
アポロニオはプロメトリックが消えた空間をしばし睨んだ後、室内に残っていた副官を呼び出し、急ぎ予定の変更を伝える。VTOLの状況を確認するよりも、ネルヴァの顔を見る方が重要だ。
アイスキュロスは神器がなければ、その辺のヒーローよりも弱い。いざとなれば、アポロンフォースのメンバーがどうにかしてくれるだろう。対して、ネルヴァは神器が使えなくともそれなりに格闘術を収めている。あのヴァッカリオが後れを取るとは思えないが、心配であることには変わりない。

「アイスキュロスには一応監視をつけろ。できれば戦闘能力の高いヒーローを」
「承知しました。総務部に連絡して人員調整を行ってもらいます。……信頼できるのでしょうか?」
「……奴らも、理由があって裏切りをしたのだ。それが解消された今であれば、多少は信頼できるだろう」

と言ったが……アポロニオは少しばかり腹部をさすった。アイスキュロスの顔を見ただけでも古傷が痛む気がする。そのうえでネルヴァの顔でも拝もうものなら、不愉快極まりなさそうだ。
胴体に穴を開けられた恨みはまだ忘れていない。まあ、あれがきっかけで弟と仲直りできた件については感謝しないこともないが。

「まさか、助っ人がネルヴァだとは……」
「……私では力不足だろうか?」
「いやあ、十分だよ十分。でもお兄ちゃんがなんて言うかな……」

突然現れたプロメトリックにネルヴァを押し付けられたヴァッカリオは、同行しているアポロンフォースのメンバーたちの白い目を一身に受けながら頭を抱えていた。
アポロニオ付きの副官へ警務部門の部門長から事情を連絡してもらったのだが、どうやらアポロニオの方でもひと悶着あったようでこちらへ向かっているとのこと。
とりあえず、アポロニオからの指示は「ネルヴァのことは気にせず作業を続けろ」だったので、改めてアポロンシティの一部地下道から、はたまた下水道から、地下のマッピング作業を続けることにする。ネルヴァは臨時の調査本部で大人しくしているように言い置いて、ヴァッカリオは一人歩みを進めた。

「全く、プロメトリックにネルヴァに……本当に今日は思いもよらない来客ばかりだ」
「……気づいていたのですか」
「もちろん。こっちが一人になるの、伺ってただろ?」

とある路地裏に隠れるように身を滑り込ませたヴァッカリオに、一人の眼鏡をかけた青年が声をかけた。少しばかり、ヴァッカリオと因縁のある相手。その青年は小さなメモリスティックをヴァッカリオに渡す。

「英雄庁の地下通路、網羅した地図が入っています」
「パーフェクトなタイミング。……おいら達が地下を探っているの、いつから把握していた?」
「スパイはどこにでもいるということですよ」
「相変わらずロクでもない事やってるなあ。今度会う時までに足を洗っとけって言ったの、忘れたか?」

少しだけ、ヴァッカリオが青年を威圧する。
この眼鏡の青年は、言うに及ばずオリュンポリスの裏を牛耳る闇組織の一員だ。以前、対峙した時は都合があって見逃したが、いまだに組織に身を置いているらしい。

「忘れてはいませんが、自分の居場所は兄貴のいるところなので」

それより、と青年は眼鏡の位置を手で直すとヴァッカリオの顔を真っ直ぐに見た。

「早く解決していただかないと、こちらも困るのですよ。よりにもよって一番面倒くさいアポロンシティに閉じ込められたんじゃ、商売あがったりだ」
「そのまま潰れてしまえっての。……はあ、どうもお前を捕まえるタイミングに恵まれねえなあ。他のヤツに見つかる前にとっととオニイチャンのいるおうちに帰んな」

しっし、とヴァッカリオが手を振ると青年は無言で踵を返した。路地裏の暗がりに消えていく背筋を伸ばしたスーツ姿を見送る。まさか、闇組織の手がアポロンシティにまで及んでいるとは予想外だった。この件をアポロニオに話したら、間違いなく厳しい捜査が行われるだろう。
手の中のメモリスティックを眺めてから、ヴァッカリオは闇組織については黙っておくことに決めた。それぐらいの司法取引は、許されるだろう。ネルヴァですら今は超法規的措置で無罪放免となっているのだから。
調査本部に戻ったヴァッカリオは、さっそく地図データを扱っているメンバーにメモリスティックを渡して中身を確認してもらう。その様子を周囲の人間も、ネルヴァも興味深そうに見ていた。
そこに、副官を連れたアポロニオが見るからに不機嫌そうなオーラを漂わせて歩いてくる。

「あ、おに……アポロニオ、さん」
「……!」

露骨に傷ついた顔をしたアポロニオから目をそらして、ヴァッカリオは内心で冷や汗をかいた。今、ここにはヴァッカリオとアポロニオの関係を知らない一般ヒーローもいる。その状況で「お兄ちゃん」と呼ぶことは躊躇われた。その結果が、あのぎこちない呼び方だ。
アポロニオの方も、なぜそういう呼び方をされたのかは承知している。が、それとこれは別の話だ。さきほどまで裏切り者の顔でも拝んでやろう、と勢い込んでいた心は一瞬で萎びた。どんよりとしたわかりやすいオーラをまとって、ヴァッカリオにネルヴァの様子を尋ねた。

「神器はもちろんだけど、人造神器も持たせてないよ。手伝いに来ただけで、すべてこちらの指示に従う、ってさ」
「……そうか……」
「あー……元気出して?ほら、仕方ないじゃん、いろいろ人いるんだし……」

ぼそぼそとヴァッカリオが身を屈めてアポロニオに耳打ちする。それにため息で返してから、アポロニオは頭を振ってアポロンVIの顔に戻った。

「ネルヴァ」
「!アポロンVI……!」
「今は何も聞かない、お前も何もしゃべるな。一時的にだが罪状は取り消しにしておく。しかし、神器を使うことは許さない。人造神器は一番低レベルのものまで、だ」
「ああ、それで構わない。……オリュンポリスの危機とあって、居ても立っても居られなくて」

アテナVIIの時よりも、柔らかい表情を浮かべつつ、しかし、その眼差しはアテナVIIを思い起こさせる真っ直ぐさでネルヴァはアポロニオを見た。アポロニオはその視線を受け止めると、微笑みこそしないものの同僚に語り掛けるかのように「期待している」とだけ短く告げた。
アポロニオの言動に、少しだけネルヴァは驚いた。あの自分と同じか、それ以上に熾烈なアポロンVIが許してくれる……いや、許してはないだろうが、態度を軟化させるとは思わなかった。今、この場で、処断される可能性もネルヴァは多少考えていた。自分の知らない間に、彼にも何かあったのだろう。

「……え、何、おいらの顔に何かついてる?」
「……いえ、何も」

アポロニオとネルヴァのやり取りを黙って見ていたヴァッカリオを振り返り、ネルヴァはきっとこの男だろうな、と思った。ヴァッカリオのおかげで、ネルヴァの心は牢獄から解き放たれたのだ。それに、アポロニオと仲良く公園で弁当を分かち合っていたあの姿を見れば、おのずとわかるものだ。

「ところでヴァッカリオ、聞きたいことがあるのだが?」

険しい顔をしたアポロニオがヴァッカリオの腕を引っ張り、本部の片隅へと連れていく。やはり仲が良い兄弟だな、とネルヴァはのほほんと思うのであった。
実際は、ヴァッカリオが謎のメモリスティックを持ってきた、という話をメンバーから聞いてアポロニオが詰めているだけなのだが。

「……どこであんなものを」
「エー……協力者については、明かせません、そういう約束で……」
「お前なあ……!」

アポロニオは少しだけ背伸びをすると、ヴァッカリオの耳を引っ張った。

「いたいいたい!!」
「裏で何を暗躍しているのか知らんが、ほどほどにしておかんか!」
「ごめん、ごめんってば!反省してます!!」

耳を思い切り引っ張られた上に、思い切りゲンコツを頭に食らってヴァッカリオは頭を抱えてしゃがみこんだ。手加減をしてくれているとは言え、怪力のアポロン神、その神話還りのアポロニオは見た目以上にパワーがある。
アポロニオはしゃがんでいるヴァッカリオを見下ろすと、わかりやすくため息をついた。

「あのなあ、アポロンVIの座を心配するなら審査会で問題になるような行動は慎め、バカ者」
「おっしゃるとおりで……お兄ちゃん、ごめんって」
「もうこれ以上の厄介ごとはごめんだぞ。冗談抜きで審査会を物理的に壊さないといけなくなる」

大罪人プロメトリックに裏切り者のアイスキュロスとネルヴァ。それだけでもアポロンVIの首がかなり涼しくなっているというのに、あまつさえ出どころ不明のメモリスティック、英雄庁の極秘隠しファイルと来た。アポロンVIでいられるのもあと僅かかもしれない。涙目になっているヴァッカリオを置いて、アポロニオはもう一度深いため息をついた。
それはさておき。ヴァッカリオがもたらした入手元不明の地下データによれば、英雄庁の地下からはアテナフォースとヘパイストスフォースに主に通路が伸びており、さらに各シティの裏道に人一人がようやく通れるほどの狭い通路があることがわかった。
早速、アポロンシティの入り口から地下へと潜入し、手分けして状況を調査する。

「で、その結果、英雄庁の地下には入れない、ということか」
「そ。やっぱり直下はシールドの効果が及んでるみたい」
「アテナフォースとヘパイストスフォースの方は問題なく侵入できました。今は犯人たちに知られぬように、連絡を取り合ってる状態です」

アポロニオとヴァッカリオ、それから調査を主導していたアポロンフォース警務部の部門長と頭を突き合わせて状況を整理していた。
まさに僥倖。アテナフォースとヘパイストスフォースに連絡がついたことにより、人手不足については一気に解消されそうだ。アポロニオは久方ぶりに聞いた良いニュースにほっと胸を撫でおろす。

「ヘパイストスフォースからエンジニアを借りよう。アテナフォースからは戦闘要員の調達だな」

そう言ってアポロニオは少しばかり考え事をした後に、ヴァッカリオと警務部の部門長を見る。

「ヴァッカリオ、地下の侵入作戦はお前が指揮を取れ」
「うえ、おいらが?」
「ああ。部門長の方には主にヘパイストスフォースからのエンジニアの受け入れをやってもらいたい。アポロンフォース内部とのやり取りが多くなるからな、振り分けるならその方が良いだろう」
「そうですね、ネットワーク関連だけでなく人造神器のメンテナンスやVTOL関連にもエンジニアは回したいですし。そうなると、各部門と連絡が取りやすい私がそちらを担当するのはもっともです」

うむ、とアポロニオはその回答を満足げに受け取った。それから、改めてヴァッカリオを見る。

「ネルヴァには監視員をつける。アテナフォースとアポロンフォースの戦闘要員はゾエルと相談して振り分けを決めろ」
「え、いいの?そこまで権限もらっちゃって」
「私が振り分けするよりその方が早い。……通達を全メンバーに出しておく」

アポロニオは付き従っていた副官を振り返った。黙って頷いた副官はすぐに書面を作成し、端末から全メンバーにメッセージを流した。
かなり大きな権限をポンと渡す思い切りの良さに、ヴァッカリオは頭をかいた。実質、作戦総指揮のアポロニオに次いで権限をもらったことになる。アポロンフォースのメンバーを差し置いて、だ。しかし、副官も一緒にいる警務部の部門長も何も不満には思わないようだ。まあ、もしかしたら表に出さないだけかもしれないが。

「アポロンフォースからの戦闘要員は総務部の部門長に聞いてくれ。アテナフォースの方は……向こうにもアポロンフォースから連絡要員を置いた方が良さそうだな」
「その辺は私の方で調整しておきます」
「そうか、頼む」

では、私はVTOLの様子を見に行く、と言ってアポロニオは慌ただしく副官を連れて去って行った。

「……とりあえずは、向こうのフォースとの状況すり合わせですね」
「そう……ですね?」
「ああ、いいですよ、敬語でなくて。実質、私の上にヴァッカリオさんが立つようなものですから」
「う……なんか、スミマセン……」
「いいんです、こういう振り回され方はもう慣れました……」

遠い目をして言う警務部の部門長に、ヴァッカリオはうちの兄が本当にご迷惑をおかけしております……!と心の中でひたすらに平謝りするのだった。